思いがけない質感
時々、思いがけない質感に出会って「ヤラレタ!」と思うことがある。
いかに素材を生かした造形にするか、加工をするか、、、常に考えているのだが、 「生かした」という所が非常に難しい。 本来の姿を見せる、素材の良さを引き出す、というと簡単そうなのだが、 本来の姿に固執するあまり、シンプルでストイックな方向へ向かいやすい。
それはそれで日本的な良さでもあるのだが、 一方では面白みに欠ける表現とも言える。
例えば、コンクリートというと皆さんどういったものを想像するでしょうか?
コンクリートを生かしたものと言えば、真っ先に安藤忠雄の建築が思い浮かぶ人も多いでしょう。
平面であろうが、曲面であろうが、微塵の隙間も段差もない完璧な壁面は、 正にコンクリートの持つ無機質でクールな素材感を生かし切ったものと言えるでしょう。
そのストイックな仕上げは、日本の精神性の表現として捉えられ、海外でも大人気となりました。
少しでも隙間や段差があったらやり直しさせると言われる安藤先生!
さすが完璧です。
しかし、初めてこの建築を見たとき「え?失敗?もしかして、施工途中?」 って思ったぐらい自分の感覚では理解出来ない状態でした。 そして、しばらく観察してその豊かな表情に気が付くと「ヤラレタ」と思ったのでした。 ↓コペンハーゲンに2008年完成したDR社屋(デンマーク国営TV)
フランス人建築家 ジャンヌーベル設計
分かります?? 一見、普通のコンクリート打ち放しに見えますが、
実は・・・
型枠にシート状のものを挟み込み、わざとシワくちゃのままコンクリート注入させています。(想像)
なんて柔らかく、艶やかな表情なのでしょう。
工業製品的な完成度の高い安藤忠雄の建築とは違い、 偶然性や手仕事の跡が感じられる、不思議な素材感になっています。
もしかしたら本当に何かの失敗や偶然から生まれたデザインかもしれませんね。
でも、そこに価値を見出すセンスと勇気に脱帽。